第2話 マンションの1室へ

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第2話 マンションの1室へ

「アンケートはちょっと離れたところのマンションの1室で行わせていただきます。最後まで友だちを貫き通せば謝礼は3万円。まぁ、成功報酬というところですね。その代わり、一線を越えてしまったら1円もお支払いいたしません。まぁ、私が見たところ、お2人であれば簡単に成功報酬までたどり着けそうですが、いかがですか?」 「どうする、千晶?」 「取り分が、私が2万で高伸が1万なら良いよ」 「……お前ってさぁ」 「何よ。全額よこせって言った方がよかった?」 「いえ、そんなことないです」 高伸はため息をついてから、斎藤を見る。 「あの、じゃあお願いします」 「ありがとうございます。お2人のような人たちに巡り合えて、私たちクルーも幸せですよ。場所はすぐ近く何で……歩いて2、3分です。ご案内しますね」 斎藤はカメラマンに合図を送ると、先頭を歩きだした。そして、高伸と千晶もその後に続いて歩く。 数百メートルのところにあった、鉄筋コンクリートのマンションに着くと、エレベーターに乗り、6階まで移動する。 そして、『アンケート調査室A』と書かれたプレートの部屋の前で立ち止まると、斎藤は鍵も使わずに部屋のドアを開けた。 この部屋は常に開けっ放しにしていたらしい。 「こちらになります。どうぞ、靴を脱いでお入りください」 斎藤に促されて入ったマンションの一室は、1DK。玄関から短い廊下があり、右側にお手洗いとお風呂と思われるドアが2つあり、玄関の正面にあるドアを開けると、6帖ぐらいのダイニングキッチンがあった。 ダイニングキッチンを入ってすぐ左側には、またドアがあり、中を覗いてみるとソファとテーブルが置かれた洋室になっていた。 本当であれば、ここを寝室にして使うものなのだろう。 ダイニングキッチンと洋室はベランダでも繋がっており、ベランダ側はガラス戸になっているので、外の景色が見えて、とても綺麗だった。 「へー、広い部屋ですね」 「ホント。学生の一人暮らしじゃ、中々こういう部屋には住めないもんね」 「ホント、そうだよな」 高伸と千晶は部屋の中を見渡している。 「さぁさぁ、お2人とも、そちらのソファに並んでおかけください。今、飲み物をお持ちしますので」 斎藤に促され、高伸と千晶は部屋を見るのをやめて、6帖ぐらいの洋室にあるソファに座る。 2人掛けのソファーなので、並んで座ると数十センチほどしか間は空かなかった。 斎藤は手際よくドリップコーヒーを淹れると、2人の前にコップを置いた。 「それでは、改めまして斎藤と申します。この度は、弊社のアンケート調査にご協力いただきありがとうございます。再度システムをお伝えいたしますね。これから私たちが20個の課題を伝えますので、それをこなしながら友情を貫き通せれば、成功報酬として3万円をお渡しいたします。また、今回は課題を出している時に撮影も入れさせていただきますので、同意書にもサインをしていただけますか?」 斎藤は2人の前に同意書を出した。一番下には、2人の名前を書く欄がある。 「私、こういう苦手なんだよね。高伸がちゃんと読んで確認してよ。カメラが入ることには問題ないから。だって、絶対高伸と一線を超えるってことはあり得ないし」 「ははは……まぁ、そうだろうけど。絶対って言われると傷つくな」 「私、軽い男は嫌いだもの」 「……へいへい、わかったよ。それ以上言うな。俺のナニが、これ以上ないぐらいに萎れるから」 高伸は同意書を手に取って、上から順番に書かれていることを読んでいく。 「うん。これは、今斎藤さんが言ったことと同じことが書かれているだけだから、サインをしても問題ないよ」 高伸が先にサインをし、千晶に渡す。 「そ、じゃあ私もサインするわ」 千晶は何の疑いもなく、高伸の名前の下に自分の名前をサインし、それを斎藤に渡す。 斎藤は2人の名前を確認すると微笑んだ。 「はい。確かに。これで契約成立ということで、さっそく始めさせていただきましょう」 斎藤がサインを出すと、カメラマンがセッティングを行い、カメラを回し始めた。
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