第6話

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第6話

カーテンの隙間から差し込んだ光で意識が浮上する。眩しさを避けようとして寝返りを打つと、ふと額に温かいものが触れた気がした。その正体を不思議に思い、薄く目を開ければ、飛び込んできた見慣れない光景に一瞬で眠気が覚める。 「……あ、えっ!?」 「おはよう」 渉の寝室にあるベッドの上で、先に起きていた瑛斗がやさしく微笑みかけてきた。寝惚けてすり寄ったのは彼の腕のなかだったらしい。 驚いて離れようとしたものの、なぜか思うように身動きが取れず、視線を下に向けるとタオルケットが体に巻かれていた。 自分が服を着ていないことに、曖昧だった昨夜の記憶が断片的に蘇る。あまりのことにどんな表情をしていいのかわからず、固まったまま言葉を失った。そんな渉を見た瑛斗が口元を緩めて、宥めるように癖のついた髪を撫でる。 「渉より早く目が覚めて、玄関にあった袋の中身と、台所使わせてもらったんだ。勝手なことしてごめん」 「う、うん。それはいいけど」 「あとはリビングに落ちてたシャツと下着も、用意してくれたのかなと思って借りちゃった。服が乾くまで着させてね」 これ、と指したシャツを見れば、たしかに渡しそびれたものだった。話を聞いていると瑛斗が食事をつくってくれたそうで、食べられそうなら温めてくると立ち上がり、寝室を出て行く。 まだ少し落ち着かないけれど、ようやくひとりになれた。タオルケットを肩から落として、おそるおそる体を確認する。肌はきれいに清められていたが、代わりに吸われた痕が至るところに残されていた。そのことに渉の意志とは関係なく、また腹の奥が疼きそうになる。 (すごい痕……ああでも、首輪(ガード)は外れてない) 薄くて頑丈な首輪に触れて、壊れていないことにほっと胸を撫で下ろした。もしひとつ間違っていたら、外していたかもしれない。 よたよたともたつきながらなんとか着替える。洗面台で身支度を整えてリビングに顔を出すと、低いテーブルに皿を並べた瑛斗が食事の準備を済ませていた。
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