第8話

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第8話

「今でもαは就活で有利だし、このまま就職して普通に暮らせるんだと思ってた。だけど何社か内定した今頃になって、親父が父さんと復縁したがってる」 「うん? 瑛斗は複雑だろうけど、お父さんがいいなら」 「俺もそのつもりだったよ。好きにしたらいいんじゃないって。そしたら親父がいきなり家に来て、内定先には話をつけたから俺の会社を継げって言い始めた」 ろくに顔も覚えていない父親がαだと聞かされても、どこでなにをしていて、どういった立場の人間なのかはまるで興味がなかった。 代々続く一族の経営から独立し、別会社を立ち上げた父の手腕は確かなものだろう。しかしあまりにも独善的で、他の企業に根回しできるほどの繋がりがあったらしい。 突然意に沿わないことを強要され、嫌だとはっきり拒絶しても勝手にスケジュールが組まれていく。このまま言いなりになってたまるかとうんざりして、最低限の荷物だけを持って家を出てきたのだという。 「それから手持ちの都合もあって、ナンパについて行ったら可愛がってもらえた。何人か転々として一昨日まで女の子の家にいたら、彼氏だっていう男が深夜にいきなり乗り込んできて……早く逃げてっていうから出てきたのはいいけど、行く場所がなくて困ったのが昨日、かな」 「それってヒモっていうんじゃ……」 「そうなるね。倒れてたっていうのはたぶん、休憩してたら寝ちゃったんだと思う」 結果的に拾ってしまった渉が言えたことではないが、ヒモになって行き倒れるαなんて聞いたことがない。このくらいかなと説明を終えた瑛斗が肩に寄りかかってきて、渉に本題を持ちかけた。 「ごはんおいしかった? 材料があったら俺、もうちょっと料理できるよ」 「……瑛斗? まさか」 「どうするか決まるまでここにいさせて。掃除と洗濯もするし……セックスもね」 シャツの襟元をぐっと下げられる。真新しい痕をさらに上書きするように口づけて、服の隙間から肌をくすぐられた。 一晩かけて馴染んだ体は本人よりも瑛斗を知っている。やめてと一言も跳ね除けられず、次第にいたずらがエスカレートしていくのに、頬を真っ赤に染めた渉が音を上げた。 「わかったっ、わかったから! っもう、離して」 「ここで一緒に暮らしてもいい?」 「んぅ、うん、いい」
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