オティリアとマリアの文通録

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 苛立ったような溜息と共に、手紙を机の上へ置く。  何という家族だろう。オティリアは改めて憤りを脳裏で呟いた。  手紙の主・マリア=ウォンチニスカは、修道院で学ぶ間、一緒だった友人だ。つい先日、共に修道院での行儀見習い期間を終えたばかりだったが、それぞれの帰途に就いたのちに届いた手紙には、とんでもないことが書かれていた。 (……望まない結婚を強制するなんて……マリアのお母様ってば、なんてひどい方!)  自分が助けなければ。  彼女を助けることは、友人の自分にしかできない。  そう思ったオティリアは、返信をしたためるべく、力強く筆を執った。 *** ――親愛なるマリア=ウォンチニスカ様  お久し振りです。お手紙、ありがとうございます。  そして……まずは、おめでとうと言うべきなのか、大変ねと言うべきなのか、判断に迷います。  確かに、ご縁談はおめでたいことなのですが、お相手の年齢……仰る通り、あり得ません。お祖父様と同じくらいじゃないですか。  しかも、プロポーズのお言葉も、どうかと思います。  マリアを妻にすることに対する返礼にお金? 的な仰りようは、とてもではありませんが紳士(ジェントルマン)がなさることではありませんね。  言ってみれば紳士とは真逆――好色な、碌でもないクソ(ジジイ)(失礼)が考えそうなことです。  そんなに若い女が欲しければ、売春宿にでも通えばいいのに。借金を全額返済してくださる、なんて言い切るくらいだから、さぞかしお金だけはお持ちなんでしょうし。  マリアが嫌なら、お断りしてもいいと思いますよ。いいえ、絶対にお断りすべきです。  だって、一度しかない、あなたの人生だもの。そんな年嵩の方……しかも、純粋に妻に欲しい、とだけ言うのならともかく、借金完済をチラ付かせるなんて、やっぱり感じはよくありませんし。  あなたがはっきり言えないのなら、私から父に言って、マリアのお母様とお兄様方にお話を通します。  いつでも、ご連絡くださいね。  あなたの友、オティリア=グロツキ
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