オティリアとマリアの文通録

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*** ――親愛なる友、オティリア様  こんにちは。ご返事、ありがとう。  こちらの返信が遅くなってしまってごめんなさい。  少しバタバタしていたもので……実は、引っ越し先から返信を書いています。  あなたの申し出は、本当に本当に、心からありがたく思ったのですが……ごめんなさい。  金の亡者になった兄三人はともかく、母が余りにも切羽詰まった様子で一転、今度は毎日のように、 『頼むから嫁いでおくれ。お前さえ嫁いでくれればすべて上手く行くのよ。お前にしかできないの』  と泣いて掻き口説くので、コロンナ=ヴァレフスキ伯爵の求婚を受け入れました。本当はとても嫌だったし、結局身売りのような形ですけど、仕方ありません。  現在、夫となったアナスタシィの援助がない状態では、正直もう、我が家には売るものさえマトモにない状況だったの――そう、私以外には。  私一人が我慢すれば、家族が皆助かるから……そう、母の言う通り、私にしかできないことだったから。  正直、今も母が再婚すればよかったのに、と思っているけれど、夫が金を払ってでも欲しがったのは、母ではなく私なのですから。  ただ、結婚してから一緒に生活する内に分かったのは、夫が思ったほど悪辣でも好色でもないということです。結婚後、 『私は見ての通りの老いぼれだし、金をチラ付かせないと君が結婚を承諾してくれないと思った。本当に最低な求婚の仕方だったと思っている』  と、心底すまなそうな顔で言っていたのには、呆れもしましたが、その場では思わず笑ってしまったわ。  とにかく、それだけが救い……それに、嫁いだ以上は、不幸を数えるのはやめたほうがいいと思ってるの。  私は、ここでの幸せを探していくつもり。  ……最後に、大切な友と言いながら、あなたを結婚式に呼ばなかったのは申し訳なかったわ。心から謝ります。ごめんなさい。  最初に愚痴ってしまったし、この縁談が来た時乗り気じゃなかったのにって思われると思ったら、呼ぶのも気まずくて……。
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