骨、混じる

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 くさいし、汚い。だけど僕の手は縛られた生ゴミの袋を開けていた。  中から夕飯に出ていた魚の骨を回収する。  これだけあれば、当分はもつはずだ。  僕はそれを別のビニールに移し替えて、庭へと運ぶ。部屋だと匂いでバレるから、保管には向かない。  だから僕は、庭にある納戸の後ろに隠していた。  芽生えた殺意。これは復讐だ。  僕の大切な金魚を殺した兄が許せない。だから僕は、魚の骨を兄の食事に混ぜている。  魚が出てない食卓にもかかわらず、魚の骨が突き刺さる恐怖。  兄がそれを金魚の呪いだと、思ってくれれば良い。あわよくば、喉に多くの傷を作って痛みに苦しめば良い。  僕は金魚が植わっている盛り上がった土の前に立つ。 「君の骨を使うのも、良いかもしれないね」  まだ、白骨化してないだろう。だけど、もう少ししたら、骨と化すはずだった。  その時は、その骨を使って兄の食事に混ぜればいい。  そしたらきっと、この金魚も報われるはずだ。  僕は笑った。  兄のことで心から笑ったのは、これが初めてかもしれない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加