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演技。……演技!?
なんだよ、これ。心葉、この会話はいったいなんだ?
「あれくらい任しとけって。じゃあ、お家のほうに──」
「三沢さん。見合いなんて必要ないんじゃないですか? もう十分親しそうだし」
突然姿を現した俺に、二人が文字通り固まった。
「あ、違うんだ! 心葉は何も悪くない。俺がちょっと調子乗って、その」
三沢の焦ったような声。
「じゅんちゃん、いいの。私のせいよ。俊樹くん、この人は私のために力貸してくれたの。それだけだから」
まるで庇い合うような二人に、余計に神経が逆撫でされた。
「どっちでもいいけど。俺には説明してもらう権利あるよな?」
「……うん。そこのカフェでもいい?」
苛立ちを隠せないまま冷たく言った俺に、強張った表情で口にした心葉に頷く。
「心葉──」
「じゅんちゃん、今日は帰って」
何か言い掛けるのを彼女に無理やり押し返されて、何度も振り返りながら遠ざかって行く三沢の背中を俺はじっと見つめていた。
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