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「……つまり、見合いなんて最初からなかったんだ。騙したんだな、俺を」
「俊樹くんに近づくきっかけが欲しくて……。俊樹くんが『お金に困ってる』って話してるの聞いたから、それなら私がお金出せば一緒にいてくれるって──」
カフェの席で飲み物に手をつけないまま切り出した俺に、心葉が語り始めた。
「なんでそういう話になんの? ココはさ、俺をどうしたかったわけ? 都合のいいペットかなんか?」
「そんなんじゃないの! せめて俊樹くんの欲しいものあげられたら、って。そのついでに、一か月だけでも一緒に過ごせたらそれでよかった。私なんてお金くらいしかないもん。……それだって家のものだし。本当に空っぽだから」
自分でもタチ悪いって承知の上の俺の言葉に、彼女は必死の形相で返して来る。
なんとなく、この子の自信のなさとか後ろ向き加減の理由がわかったような気がした。「持ってる」からこその悩みやなんかもあるってことか。
それは確かに俺にはわかんねえ。
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