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「でもさ、ココの家ってお金持ちでいい家なんだろ? 今回の見合いは作り話でも、勝手に恋愛とか結婚とか無理なんじゃないの?」 「そ、──」  俯き加減だった顔を上げた心葉が何か言い掛けるのに、言葉を被せる。 「ああ、それとも学生時代だけのお遊びだからどうでもいいのか」 「ううん、本当にうちはすごい家柄でもなんでもないのよ!」  投げやりな俺の言葉に、彼女は早口で弁解し始めた。 「父と母も恋愛結婚で、私にも好きにしていいって言ってくれてるわ。姉もお見合いなんかじゃなくて同僚の普通の人と婚約してるし。……お金は普通よりあるかもしれないけど、それだけなの」  ただ俺と一緒にいたかった、って心葉は口にするけどさ。 「ココ、俺今日はもう無理だ。……ちょっと一人で考えたい」   僅かに瞳を潤ませた彼女に気を遣う余裕もなくて、俺はさっさと席を立った。
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