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一人で向かうのは初めての、心葉の家の最寄り駅。
先日のカフェに入ると、彼女はもうドリンクを前に座って待っていた。この間とは違う二人掛けの席。
俺もカウンターで適当にコーヒーを買って、奥の座席に進む。
「……俊樹くん、来てくれてありがとう」
「俺が誘ったんだから当然だろ。ここですっぽかすほどクズじゃない」
なんて会話だよ。これじゃ俺、すげー嫌な男だ。
なのに、うっすら微笑んでる心葉。そして、着てるのが最初の食事のときと同じ服だって気づいて堪らなくなった。
バイト初めてまだすぐの頃。
俺は奢りメシありがてえ! が先に立ってたけど、彼女にとっては『楽しいデート』だったんだろうか。
単にあんまり種類ないって理由だけど、俺も同じような白Tと黒デニムだ。まるであの日に戻ったみたいな……。
ただの考えすぎかもしれない。
でも心葉は、俺が知る限り同じ服繰り返し着たりしてなかった。一度しか着ない、なんてわけないのは当然として、組み合わせは変えてた気がする。
このワンピースもボレロも確かに何度か見た気はするけど、いつも別の服と合わせてた。
あと、似たような地味な服でもよく見ると違うやつ。
今思えば、この子かなり衣装持ちなんだよな。
ああ、やっぱり俺は……。
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