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「……それで俺に、その見合いに『彼氏』として乗り込んでぶっ壊せって?」 「ううん、それは困る! そんなことしたらうちの親の顔潰しちゃうから」  じゃあどうすんだよ、と思った俺に、彼女は説明を始めた。 「お見合い自体は来月で、一か月とちょっと先なの。互いの家同士は納得の上なんだけど、向こうだってまだ二十四くらいの人だし絶対相手、つまり私のことが知りたいと思うのよね」  そりゃそうだ。  その年で見合いとか「いいお家」なら避けられないにしても、せめてどんな女なのか気になるよな。よそ行きの写真や履歴書? だけじゃわかんないことあるし。 「だからそれまでの間、向こうがいつ調べてきてもいいように私と一緒にいて『彼氏いるんだ』って見せつけて欲しいの」  それで相手の方から断らせたい、と心葉は続けた。  彼女の側からは断れない関係なのかな。なるほどね。だけど……。 「いつ来るか、そもそも来るかどうかもわかんないんだよな? それなのに一か月以上毎日一緒に?」  協力してやりたい、一緒にいたい気持ちはある。頼まれなくても立候補したいくらいある!  それはともかく、そこまで時間取られたら今のバイトできなくなるじゃん。大袈裟だけど、そうなったら俺の生死に関わる。  マジ、ギリの生活してんだよ……。
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