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 俺がそういうの疎いというか興味ないせいかもしれないけど、この子には本当に『金掛かってる派手なファッションや持ち物』ってイメージは全然ない。  むしろ地味なくらいだし、他の子と比べてもごくフツーかそれ以下って感じだったんだ。  顔立ちじゃなくて盛り具合っての? 実はメイクもしてないんじゃないかって思ってたら、クラスの女の子に「薄ーくだけど一応してるよ」って笑われたな。  だけど考えてみれば。  学生なのに「お見合い」なんて、一般家庭じゃあり得ないよな。価値観とか金銭感覚そのものが違うってわけか。 「あの、少な過ぎた……? ごめんなさい、私よくわからなくて。あといくら──」  考え込んでる俺に、まったく別方向の不安を抱いたらしい心葉がおずおずと口にした。 「いや十分だから! わかったよ。俺で役に立つなら」  笑いたきゃ笑えばいい。  そうだ、俺は金に目がくらんだアホだ。違法なことする気はないけど、金は欲しいんだよ。文句あっか!  金をもらってちょっと気になってた子と後ろめたさと情けなさを、俺は必死で誤魔化してた。  誰に聞かせるわけでもなく、自分に向けて。
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