15人が本棚に入れています
本棚に追加
【2】
「あの、俊樹くん。今日はお食事に行かない? いい……?」
「いいよ、何食う?」
心葉に依頼された『彼氏のフリ』バイトを始めて三日目だった。
おずおずと提案する彼女にあっさりOKする。
俺は大学の寮暮らしの貧乏学生だから、「経費」のメシなんてありがたい限りなんだ。食事付きじゃないから共同の自炊設備はあるけど、一人分作るのって手間以前に意外と金掛かるしさ。
……金がないと、心まで貧しくなりそうだよ。だって食べるもんで身体だけじゃなくて気分も変わるじゃん?
「えっと、お友達に教えてもらったんだけどシェアのお店なんだって。そういうの嫌じゃない?」
「いや、全然。そんな繊細じゃないし、俺。特に好き嫌いもないしな。あんまり気の張るとこはちょっとだけど、シェアなら気楽なんだろ」
「うん! 学生でも気軽に行けるとこらしいから。大丈夫だと思う」
彼女に連れられて行った店は明るくて、でも適度に落ち着いてて、すごくいい雰囲気だった。
聞いたとおり、客の年齢層はそんな高くない。「大学生や若い社会人のデート用」って感じ?
最初のコメントを投稿しよう!