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水川の靴が見つかった。
大人たちは別に話題にしなかったけど、学校ではどこにあったのかと話が弾んでいた。
見つかったのは水川が飼っている柴犬の小屋の中だった。
「靴見つかってよかったじゃん」
「うるせぇな……」
教室の中には弛緩した空気が流れていて、滝本の顔にも笑顔が余裕が見て取れた。
何となくではあるものの、土居も安堵したような表情をしている。
そして僕もまた、教室の中で皆を見ながらゆっくりと息を吐いた。
さて、これで滝本が土居に詰め寄ることはなくなったのだが、彼女の虐めがなくなったわけではない。
容疑者から外れたというだけで、仲が良くなったわけではないのだ。
虐めとは言っても会話をしないだとか、そういったものではあるのだけど、ストレスに違いはないだろう。
普段通りに流れていく日常に安堵をしつつも、僕の脳裏にはそれが引っかかっていた。
どうしてこんなことを考えるようになってしまったのだろう。考えは纏まらない。
そんな折に「ね」と小さく声をかけらた。
声はか細いものではあったけれど、しっかりと僕まで届いていた。
「靴を隠したの、野根くんでしょ」
声の主は土居だった。
僕は曖昧な表情を作って彼女の問から逃げようとする。
けれど、土居は確信があるのだろう。覚悟を決めたその顔に、僕は生唾を呑み込んだ。
首を横に振って否定してみても彼女が納得するとは思えなかったけど、行動しないわけにはいかなかった。
小さな話し声ではあるものの、教室には水川たちが居るのだ。勝手に僕を犯人されると困る。
「ああそう」
土居はそれ以上僕に何かを言うことはなかった。
だから僕は解放されたと思って安堵していたのだけど、それはどうやら甘かったらしい。
ゆっくりと家に帰った僕を待っていたのは──
──「おかえり」とぶっきらぼうに言う土居の姿だった。
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