三章

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『本当は水川くんの靴隠したんでしょ?』 『いや急だな』  土居の一言目が直球過ぎて思わず怪訝な表情を浮かべてしまうが、彼女は僕とは違って嬉しそうだった。 「こっちだとそんな感じなんだね」  僕は『うるさい』と返すが、彼女は笑う。「なんか意外」と。 『それで、靴隠した?』 『なんで言わなきゃいけないんだ』 『私が誰かに言うと思ってるの?』 『ボッチ乙』 『はたから見たら野根くんも変わんないけど』 『俺は好きで一人なんだけど』  会話が脱線したものの、土居はどうしても僕が水川の靴を隠したのかどうかを知りたいのだろう。  三度目の問が送られてきた。 『で、靴は?』 『隠したよ』 『これで満足か?』包まった布団に頭を埋めて、僕は土居の様子を伺った。  僕が水川の靴を隠したことに対してどう思ったのか。それが気になったのだ。 『助けよつとしてくれたんだね』  そして、泣きそうになっている彼女を見て慌てるのだ。 『なんでそうなるんだ、頼むから泣かないでくれ』  慌ててメッセージを送る僕なんて土居は知らずに、見事なタックルをかましてきた。  それは彼女からしたらハグだったのだろうけど、僕からしたら強力な攻撃だ。空気だけが口から漏れていく。  勢いよくベッドへと飛び込んだ僕たちは、彼女に押し倒される形でその距離を一気に縮めたのだ。
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