立浪草

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「でも、もう君はここにいなくていいんだ」 丞はそう言うと、茉莉を支えながらゆっくりと立ち上がった。 「君は、もう十分頑張った。だからもう、解放されていいんだよ」 そう言って辺りを見渡すと、数え切れない程の鴉達が丞達を取り囲んでいた。 (...相変わらず仕事が早いこと) 鴉達を見て苦笑いしつつ、茉莉を見つめて言った。 「茉莉、一緒に行こう」 もう、彼女からは強い力を感じない。 彼女の力を増幅させていた強い感情を解き放ち、茉莉本来の姿へ戻したのだ。 涙を溜めた茉莉は、丞を見上げるとゆっくりと頷いた。 その様子を見た丞が指を鳴らすと、無数の鴉達が2人を包み込み、一瞬にして姿を消した。 * * * * 清く朗らかな世界。 明らかに空気が違く、ここは先程いた場所とは違うとすぐにわかる。 「ここは...?」 「天界だよ」 神々が暮らす場所。 そこに、丞と茉莉が辿り着いた。 「これから、主に会いに行くよ」 「主...?」 「そう。君を連れ戻すように命じた神のこと」
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