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現世と比べて疲労感はないが、その厳かな雰囲気に緊張感が走る。
「丞」
「はい」
「随分時間がかかったようだな」
「申し訳ございません。ですが、不確かなまま任務を遂行したくなかったので」
「まぁ、無理もない」
姿は見えず、大きな影だけが目視できる『主』が、茉莉の方へ向いたのがわかる。
そのただならぬオーラに、押しつぶされそうになる茉莉は、思わず息を飲んだ。
「茉莉」
「は、はい...!」
その深い声に、茉莉は圧倒されてしまう。
実体はないものの、身体が震え上がるような感覚が、茉莉を襲った。
「...すまなかったな」
「え...?」
神に謝られるなんてことがあるとは思っても見なかった。
なにが起こっているのか茉莉自身も分からないまま、主は言葉を続けた。
「お前の命を救うことが出来たら、お前をもう少し早くこちらに連れ戻すことさえできていれば、これほどまでお前を苦しめることはなかっただろう」
「ただ、わかって欲しい。いつだって私のような存在は、ただ見守っている事しかできないのだ。ただ見守り、少しばかり背中を押すことくらいしか出来ない」
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