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「何かを告げることも、力を貸すこともできないのだ」
静かな、その温かく深みのある声が、茉莉を一瞬にして包み込んだ。
そして、絶対に許さないと思っていた茉莉でさえも、そんな恨みなどどうでも良くなってしまうほど、その声は心地よく、その言葉には嘘がないのだと感じた。
茉莉の目に涙が浮かび、みるみるうちに溢れ出た。
「茉莉、お前は役目を全うした。よくやったな」
そう言うと、とても温かい光が茉莉を照らし、包み込んだ。
(ああ...、懐かしいな)
そう思いながら茉莉を見て、思わず目を細めた。
人のために奪われた命。
何かの願いのために生贄にされ、まるでその象徴にされた。
そしていつの日か、彼ら人々にその地に縛り付けられ、自らを解放することさえ出来なかったあの頃の自分と茉莉を重ね合わせた。
現世での役目を終え、天界へと来た茉莉は、第2の役目を果たす時がきた。
そう、丞と同じ、神の使いとしての道が開かれたのだ。
「茉莉、お前の力を借りたい」
「私の力を...?」
「そうだ。茉莉も丞のように、我々の使いとしてお前たちのような存在を救って欲しいんだ」
「じゃあ、丞のくんも...?」
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