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7月3日。
ここ、帯水(おびみず)では毎年作物の収穫を祝う祭りが開催される。
町を挙げて盛大に行われる『嗣紀龍(しきりゅう)祭』は、古くから続く伝統行事として有名だ。
当日は昼夜関係なく賑わいを見せる。
「なんでこんなところに来なきゃ行けないのかな」
人々が行き交う中、浮かない顔をした少年が1人。
周りを見渡し、ため息をひとつついた。
「はぁ...。さっさと済ませるか」
また、ため息をつく。
そんな少年の前にあった看板に、鴉が舞い降り鳴いた。
「..そんなこと言ったって...。仕方ないだろ?僕は人混みが嫌いなんだ」
その言葉を聞いた鴉は、まるで答えるかのように鳴いた。
「はいはい、分かってますよ〜。ちゃんと任務は遂行するからさ」
(まったく...。少しくらい愚痴ったっていいじゃないか)
「...丞(たすく)」
この声にギクッと反応し、恐る恐る天を仰いだ少年。
「丞、お前の役目は分かっているな」
周りに響くような大きく深い声が、少年だけを包み込む。
「...はい。主からの命を遂行することです」
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