立浪草

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そう頭を過ぎるが、同時に「そんなことが起きたらもっと被害に及ぶ人がいただろう」と思い、これはこれで良かったのだと改めて思った。 音明神宮の鳥居の部分は、とても強力な結界が張られているらしい。 通常、魑魅魍魎(ちみもうりょう)はこの中に入ることも出来ない。 ただ、今回は例外だ。 この音明神宮で命を落とた少女は、成仏出来ず地縛霊になってしまったのだろう。 そして、この結界のせいで、この場所から出ることさえも許されなかったのだろう。 何十年も、何百年も、ずっと。 そう考えると、人々を襲いたくなる気持ちも分からなくもない。 ただ、もう悪さを許す訳には行かない。 「...お願いだから、すぐに出てきてくれよ?」 そう呟くと、豪華絢爛な境内を歩き出した。 * * * * 境内を歩いていると、お務めをしている巫女達が目に入った。 普段はこの境内も観光客がいるのだろうが、今日に限っては閑散としている様子だった。 「やっぱり今年も誰一人来ないね」
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