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「そりゃそうよ。あんな都市伝説があれば、誰だって来たくないはずだもん」
「むしろ、面白半分で来て欲しくないよね。また不吉なことが起きたら嫌だもん」
彼女たちの横を通り過ぎると、そんな声が聞こえた。
そう思うのも無理もない。
彼女たちは毎日この場所でお務めしている巫女であり、そんな場所に訪れただけで死人が出るなんて、誰だって嫌に決まっている。
「...ご苦労様」
彼女たちが気の毒に思い小さくそう言うと、なにか気配を感じたのか、視線をこちらに向けてきた。
ただ、丞を彼女達が目に捉えることはなかった。
丞のような神の使者は、通常人間には見えない存在だ。
人間でもなく、神でもない。
半神のような存在だ。
だから、巫女達も観光客達も、丞を目にすることは決してない。
それなのに。
頭上で鴉が円を描き飛び、激しく鳴いている。
それを涼しい顔で見て、丞は静かに言った。
「そう、やっぱりあの子か。」
鴉からゆっくり、彼女へと視線を移す。
あそこで固まって話している巫女達よりも豪華な飾りを付けた巫女が、こちらを険しい顔で見つめていた。
(そんなに睨むなよ...。)
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