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境内の雰囲気がどんどん重くなっていく。
それは多分、今にも襲い掛かりそうなほど険しい顔をしてこちらを見つめている彼女のせいだろう。
「真っ暗な神社って、それだけで雰囲気出るよな〜」
「こんなところに本当にいるのかな?」
「だとしたら、こんな寂しい場所にたった1人なんて、可哀想だよな〜」
「でも、町のために死ねたのなら、死んだ子も本望だったんじゃない?」
『違う』
「...!」
明らかに丞の耳に届いた声は、怒りと悲しみと苦しみが満ちた声だった。
(まずい...。あいつら、しっかり刺激与えてしまっている...!)
そんな声も聞こえないまま、彼らは噂話をしながらずんずんと境内を進んでいく。
彼らが口を開くたび、彼女の放つオーラは増していった。
その時だった。
今まで遠くで彼らを睨み見ていた彼女が、勢いよく襲いかかってきた。
(まずい...!)
丞は彼女よりも早く彼らに近づくと、術をかけて彼らの意識を奪い、結界を張った。
間一髪のところだった。
あのまま丞が間に合わなければ、すぐに彼らの命は奪われていただろう。
それほどまでに強い怨念を感じた。
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