カノン

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私は、カノンさんに教えていただいた通り『雪解桜とふきのとう』というコミュニティに参加申請を行った。参加人数を確認すれば26、思った以上の人数だ。 (まずは自己紹介をお願いします) カノンさんに促され、私は簡単な自己紹介を行う。 (はじめまして。咲夏【さっか】と言います。サイトに登録して半年が経過しました。雪解桜さんの作品は一通り読みました。どの作品でも大丈夫です。よろしくお願いいたします) 「こんなものだろうか?」 正体を隠しながらコメントすることは意外に難しそうだ。ありきたりな文章を投稿し、私は様子を伺った。 (初めまして、咲夏さん。新作の『春を求めて』は読了されましたか?) メンバーの1人がコメントを残す。 (えぇ、もちろんです。主人公のハルはフユと夢の中で出会い、デートを重ねるお話でしたね) (そうそう!フユは祖父のアキと同級生で、フユは結核で亡くなっていることを覚えていなくてさ~!祖父と勘違いしていると知ってても、ハルはフユが好きだから真実を伝えないところとか!も~!切なくてっ!) (わっかるぅ。最後に、フユはハルを連れて行こうとするんだけど、ハルの一言で正体がわかっちゃうんだよねぇ。アキにずっと片思いしていたなんて、最後までわからないよねぇ!) (そうですよね。『好きだ。これからも一緒にいる』って言った結果、アキじゃないと気付かれて、その上喧嘩別れなんて……辛いですよね) 私の発言を皮切りに、下に続く各々の感想を目で追いながら、にやけた口元を両手で隠した。 「褒められるって、この年でも嬉しいものだな」 1時間前に用意した350mlの缶ビールも空になった。普段は1本で満足する私の心も『褒め言葉を肴にもう1本!』と要求する。ついでにトイレも済ませておくか。 私は一時的に席を外した。
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