カノン

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「カノンさんは、本当に私の作品が好きなんだな」 投稿サイトに登録しなければ出会えなかった貴重な相手。直接会って話せたら……そんなもどかしさを言葉の花束で届けたいと思うのは、気取りすぎだろうか。 (カノンさんは、雪解桜さんの作品が本当に好きですね) (そうなんです。全て初版から持っていますよ?一度お会いして全ての作品にサインを書いてもらうことが夢なんです) (幻と言われたデビュー作の初版も、ですか?手に入れることは難しいと思いますが) (実は、本屋さんでバイトをしていた時に初めて購入した作品だったんです。雪解桜という名前に惹かれちゃって。それからファンなんです。友人に貸す用と自分用、合わせて2冊買って。運がよかったんです) (それはすごい。では、私がその雪解桜だとすれば、どうしますか) カノンさんからの返事はない。 (すみません、ひどくないですか?) (気持ち悪いです) (証拠ありますか?ありませんよね?) (なぜ、そんな嘘をつくんですか?カノンさんが好きだとか?) 外野の質問にいちいち答える必要はなかったし、カノンさんの返事も来なかった。
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