最高の家族

俺は引きこもりだ。大学デビューに失敗し、大学に行かなくなり部屋に籠ってゲーム三昧だ。
俺は家族ガチャに失敗したと思っている。余計なことしか言わねぇ医者のジジイと、過干渉な教師のババアと勝ち組のくせに寄り添おうとしてババアと一緒に干渉してくる姉。俺みたいな敗者の気持ちわからねぇんだろうな。
ジジイとはほとんど会話してねぇ。俺が風呂に入る時にばったり廊下で会ったときに
「おっ出かけるのか？」「お姉ちゃんみたいに就職先をパッと決めてくれるといいんだがなぁ」
と笑って言ったことがあった。余計なことしか言わねぇジジイだなと呆れながら返事をせず横を通った。
ババアは本当にしつこい。引きこもり始めた初期は毎日毎日、
「学校に行け」「せっかく受かったのに」
と行かないことを責めたてた。姉を使ってくる時もあった。
「お姉ちゃんに履修の組み方聞きな」
だの、
「大学のルールお姉ちゃんに教えてもらうんだよ」
だの言ってきた。ババアは姉に対しても俺を気にかけるように言っていたらしく、姉も凄くしつこかった。今はそれはなくなったが、相変わらず毎日話しかけてくるし、今度はバイトをしてみたらどうだ、いいところを紹介できるなどと話しかけてくる。それだけじゃなく病院に行こうと言ってきたときは流石に驚いた。俺の病気は小さい頃に治ったんだろ？なのに今更病院だなんておかしいだろ。ババアこそ気が狂ったのかと思った。毎回寝たフリかヘッドホンで聞こえないフリをしている。そうするとババアは諦めて部屋を出ていく。本当に鬱陶しい。
姉は比較的マシだが、ババアの言いなりになっている様子が嫌だった。姉は大学4年生で、平日は友達と飲み歩いたりデパ地下で優雅にバイトをして休日は社会人の彼氏の家に転がり込んで贅沢に過ごしていながら、成績は常にトップという頭のおかしいやつだ。就職先もパパッと決めて就職してから有利になるように勉強もしているらしい。間違いなく人生勝ち組だろう。姉は中学時代いじめられていて不登校だったが、今はそれを乗り越えたのか今度教育実習に行くらしい。でも、姉とは時々リビングで会話をする。内容は親の非常識さやしつこさについてなどだ。
「でも姉ちゃんは勝ち組だから苦労ないだろ」
「何言ってんの。統合失調症って知ってる？」
「なんだって？」
「統合失調症。所謂幻覚とか幻聴とか感じちゃう精神障害」
「それが何？」
「私の病気。2週間に1回通院してんのよ」
姉に限ってそんなキチガイな病気になっているとは思わなかった。俺はそれを受け入れられず、私も頑張ってるんだからあんたも頑張れという意味だと思って、
「あっそ」
と一言言って部屋に戻った。それ以来姉に対しても基本的に無視するようになった。