おじいちゃんの家

5/10
前へ
/64ページ
次へ
目覚まし時計もなく、いつも通り健太は起きた。 午前7時ちょうど、窓から差し込む朝日に目を細めた健太は隣で寝ている母親を見る。 すやすやと寝ていたが、健太の視線を感じて目を覚ました。 「おはようケンちゃん」 「おはようお母さん」 2人は立ち上がり、洗面所に向かった。 顔を洗い、気分も顔の汚れもさっぱりする。 健太はトイレで用を足し、心も体もすっきりさせる。 トイレのレバーをひねると水が出た。 ボットントイレというものではなく、健太は少しがっかりする。 「おはようございます」 「おじいちゃんとおばあちゃん、おはよう」 居間に足を運ぶと、すでに祖父母はテーブルの前に座っていた。 ニコリと笑った祖母が挨拶を返す。 「よく眠れたか?健太」 「うん、眠れた」 「お腹空いたか?」 「そんなには」 祖父は新聞を読む目を上げて、孫の顔つきを観察した。 疲れも喜びもない、崩れることのない健太の顔がさらに端正な顔立ちを作り上げている。 「そうか……」 祖父は黙り込んで麦茶を飲む。 母と健太は座り、じっと沈黙の空間に滞在した。 そして祖父は息を吐き、ようやく言葉を紡ぐ。 「どれ……ずっと家にいるのもつまらんし、朝飯前にじいちゃんと散歩に行こうか」 「いいよ」 「今はまだ日もそこまで暑くはないからな、じゃあ行こうか」 「うん」 「わ、私も行きます」 母の追従する提案に祖父は意味ありげに目を細めたが、特に反対はしなかった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加