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3人は立ち上がり、外に出る支度をする。
母親は寝室に置いてある荷物から帽子とサンダルを取り出して、玄関に急いだ。
健太に帽子をかぶせて、サンダルを履かせる。
扉を開けて、朝の夏の太陽を全身に浴びた。
「涼しいね」
「ああ」
吹き抜ける風が陽ざしで火照りだした体を冷ます。
健太は麦わら帽子の位置を調整して、視界をクリアにした。
何も言わず歩き始める祖父に、2人は付いていく。
「健太は好きなこととかないのか?」
「……本を読むこと」
「どんな本を読むんだ?」
「色々」
「辞典とかか?」
「辞典も読むけど……色々」
「そうか……勉強は好きか?」
「別に」
「でも学校で1番なんだろう?」
「必要だからやってるだけ」
「そうか……」
その後は無言で舗装されている道を歩いた。
もっと荒れた獣道が多いと思っていた健太は拍子抜けした。
思い描いていた田舎も、やはり近代化の魅力には敵わないらしい。
ときおり母親が心配の言葉をかけてきたが、健太はただ「大丈夫だよ」と答える。
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