さっちゃん

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「……この山が好きだからここにいるの」 「こんな朝早くに?」 「そうよ」 「でも蛇が出るから危ないよ」 「私はへっちゃらなの、あなたみたいに弱虫じゃないから」 「そっか」 さっちゃんは眉間に皺を寄せる。 尊厳を傷つけるようなことを言われた健太が怒ることも恥ずかしがることもなく平気な顔をしているから。 「……よし、僕と遊ぼう」 「は?なんで?」 「独りで寂しいでしょ?だから遊ぼう」 「なんで私があなたと遊ばなきゃいけないのよ」 「だって……寂しいでしょ?」 「別に寂しくない、あなたも早く帰ったら?帰り道くらい分かるでしょ?」 「分かる」 「そっ、じゃあバイバイ」 「それはダメだよ」 「……なんで?」 「君の役に立ちたいんだ」 「……なんで?」 「君に助けてもらったから、命の恩人と言ってもいい」 「あの蛇に毒はないよ」 「そうなの?それでも……君は僕を助けてくれた、このままノコノコ帰れない」 「はぁ……私は寂しくない、独りでも平気なの」 「やっぱり独りぼっちなんだ」 さっちゃんは顔を歪ませた。 イライラが募っていく、どうも目の前の男の子に話が通じていないようだ。 「さっきからなんなの?私を馬鹿にしてるの?」 「違うよ、独りぼっちの気持ちが分かるだけなんだ……僕も友達がいないから」 「へぇそうなの?じゃあ分かるでしょ?独りでも平気なことが」 「うん、僕も独りは好きだ」 「よかった分かってくれて」 「でもずっと独りじゃ寂しいってことも分かる」 さっちゃんは顔を斜めにして健太を見つめた。 彼は一切表情筋を動かさずに、視線を受け止めている。 「……そう、まあなんでもいいけど私には関わらないほうがいいよ」 「そういうわけにはいかないよ、何か君のためになるようなことをさせてほしい」 「じゃあ帰って」 「それじゃ僕の気が収まらない」 「あなたの気なんて知らないよ」
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