少年の夏

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「おお、早かったな」 引き戸の玄関がガラガラと開き、1人の初老の男性が現れた。 人のよさそうな笑みを浮かべて健太たち親子に近づいてくる。 その顔を凝視した健太は、思わず小さな声で呟いてしまった。 「お父さんに似てる……」 「ははは!そりゃお前のお父さんの兄貴だからな!」 あっけらかんと笑うその男性の姿はまるで父親を鏡で映したようだった。 違うのは白髪頭と、顔に刻まれた皺だけだ。 「ケン坊、覚えてるか?」 「この人を?ううん、覚えてない」 「そうか、まあ会ったのはだいぶ昔だからな」 「ケン坊!誠一おじさんだ!よろしくな!」 誠一おじさんは健太の両脇をかかえこみ、その小さな体を両腕で浮かした。 健太は相変わらず無表情である。 「おじさんはお父さんのお兄さんなの?」 「そうだぞ」 「でも……かなり年上に見えるよ」 「ははは!遠慮せずじいちゃんって呼んでもいいぞ!お父さんとは15歳離れてるからな!」 「そうなの?どうして?」 「どうして?そりゃ俺たちの親父とおふくろがハッスルしたからだ!」 「ハッスル?」 「ちょっと!!」 母親の噛みつきにおじさんは狼狽えた。 普段は控えめでよくも知らない相手に突っかかる母親ではないのだが、健太の悪影響になりそうな事柄には感情をむき出しにするのだ。 「おじさん、脇が痛いよ」 「お、悪いな」 おじさんは健太を地面におろした。 健太は乱れた衣服を整える。 「外で立ち話ってのもなんだな、中に入れよ親父もおふくろもいるからよ」 「そうだな」
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