少年の夏

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父とおじさんは仲睦まじく会話をしながら玄関から中に入った。 健太も母親に手を繋がれ、同じように中に入る。 礼儀正しく「おじゃまします」と言って汚れのない靴を脱ぐ。 上がり框を乗り越えて、他人の家独特の匂いを嗅いで健太は顔をしかめた。 「おーい、浩二たちが来たぞー」 おじさんが呼びかけるようにまだ見ぬ祖父母に伝えると、静かな足音が聞こえてきた。 夏だというのに紫のちゃんちゃんこを着ている祖母が顔を出し、にっこりと笑顔を見せる。 「あらぁ、疲れたでしょ?こっちに来て」 祖母は笑顔で挨拶をして、健太の顔をまじまじと見た。 そして皺だらけの顔をさらにしわくちゃにして彼の頭を撫でる。 「ケンちゃん!大きくなったねぇ~」 「おじゃまします、おばあちゃん」 「あらあら礼儀正しいねぇ、おばあちゃんのこと覚えてる?」 「覚えてないよ、ごめんね」 「ふふふ、ちっちゃかったもんねぇ、手に乗るくらい!」 「かあちゃん、それは盛りすぎだろ」 祖母に案内されて、健太たちは居間に通された。 畳が敷き詰められた部屋には大きなテーブルが置いてあり、そこには厳格そうな顔をした老人が座っていた。 健太は思った、あの人が祖父なのだろうと。 「きたか」 「なぁにしゃっちょこばってんだ親父!愛する息子が帰ってきたぞ!」 父はからかうように祖父の対面に座った。 それに続き、祖母、おじさん、母親、そして最後に健太が座った。 「お久しぶりですお義父さん」 「うん、麗子さんも元気そうでなにより……」 何かを言いかけた祖父だが、祖母と同じように健太の顔をじっと見た。 刻まれた深い皺と鋭い目、そして厳かにへこんだ頬だ。 並みの子供なら見つめられるだけで泣き出しそうな顔をしているが、健太はその眼をまっすぐに見返した。 「大きくなったな」 「うん、ありがとう」 「喉が渇いてないか?」 「うん、渇いた」 「じゃあお茶でも出しましょうかね」 祖母は立ち上がって居間から出た。 そしてお盆に乗せた冷たい麦茶を持って戻ってきた。 それを各々に渡して、皆それを飲む。 喉が潤ったことで、口も滑らかに動き出す。
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