少年の夏

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「浩二よ、お前クビになったんだって?」 「クビじゃないよ、会社が潰れたんだ」 「無職なのは一緒だろうが、どうすんだ?」 「ああ知り合いが雇ってくれるって、前と同じ営業職だよ、俺けっこう優秀だったんだからな」 「ほんとかよ?通知表で2しかとったことなかったくせに」 「わかってないな兄貴は、営業っていうのは学力じゃないんだ……どれだけ相手に親身になって、そして相手を敬えるか……その気持ちが伝われば商談も上司の飲みの誘いも円滑にことが進むってわけよ」 「浩二は昔から人がよかったからねぇ」 「かあちゃん照れるぜ!」 「ふん、お調子ものなだけだろ」 祖父はズズズと麦茶を飲みながら話に口を挟んだ。 父とおじさんは下品に笑う。 健太は我関せずといった様子で部屋の中を観察している。 「どうしたのケンちゃん、おしっこ?」 「ううん、この家広いなって思った」 「田舎だからな、家がでかいくらいしか取り柄がないよ」 「そういえばケンちゃんは何歳になるのかね?」 「10歳」 「じゃあ小学……何年生だ?6年生?」 「4年生だよ」 「へぇ!そりゃすごいな!」 「兄貴なにも考えずに喋ってるだろ?」 「……どうだ?」 脈絡なく「どうだ」と言った祖父の言葉に、皆が疑問を抱く。 何に対しての「どうだ」なのかが分からないからだ。 健太は小首を傾げて、手に持った水滴が浮かぶ透明なコップをテーブルに置いた。 「何が?」 「学校では……うまくやってるのか?」 「うまくやってるのかってどういうこと?楽しいかってこと?」 祖父は鼻を掻いた。 健太はまた首を傾げる。
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