最期まで

2/6
前へ
/64ページ
次へ
身支度をして、健太たちは外に出た。 祖父の年季の入った乗用車に乗った健太は、シートベルトをして高まる感情を抑えつける。 場所がどうこうではなく、彼女に会える事実に胸が弾んでしまうのだ。 「おじいちゃん、ありがとう」 「な、なに……別に大したことじゃない……みんな褒めてたぞ、健太のこと」 「ふふ、そっか……」 親戚はみな、今日の午前に帰ってしまった。 祖父の家は穏やかで静かな空間に戻ってしまったが、なんとなく健太はもの悲しさを感じていた。 2日間だけの騒がしい日々だったが、あの時間を思い出すと頬が緩んでしまう。 「来年の夏休みも絶対来るよ、またみんなに会いたいし……それにここでも友達をたくさん作りたいんだ」 「……そうか、じゃあじいちゃんが色々なところ連れてってやる」 「ふふ、ありがとう」 「そ、そういえば健太はモテるのか?」 「お義父さん……」 「いやすまん……別に深い意味はないんだが……まあ誠一も浩二もあんなんだが女には好かれていたからな……健太もそうなんじゃないかと思ってな」 「ふふふ……モテるよ」 「ケンちゃん!それどういうこと!?」 「あはは、女の子にも告白されたし」 「お母さん聞いてないよそんなこと!」 「聞かれてないからね」 「そうかそうか、だがな健太、人を見る目は養わなきゃならんぞ?お前にはまだ分からんと思うが、世の中には色々な人間がいる……特に女は……じいちゃんも何度も痛い目見たからな……」 「お義父さん!」 「ああ……すまん」 おじいちゃんは申し訳なさそうな顔で母に謝った。 それを見て健太は声を小さくして笑う。 「おじいちゃんの一族はみんな女の人に弱いんだね」 「ケンちゃん!」 「まあな……でも最後はいい人に出会える……じいちゃんも結婚は1度しかしてないし、ずっとばあちゃんと一緒にいるけどな……後悔したことはなかったぞ、もちろん浩二もだ」 「お、お義父さん……」 「騙されて辛い目にあって……僕たちは宝石を見つけるんだね」 「ふふ、そうだな」
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加