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広い寝室に敷布団が3つ敷かれている。
時間は午後10時に差し掛かったが、この場にいる人間は皆起きている。
健太は祖母の膝に乗り、楽しそうに話している父とおじさんを見つめている。
「ケン坊は学校でも一番頭がいいんだよな!そうだろケン坊?」
「うん」
「そりゃすごいな、頭がいいのか?」
「この前の国語のテストも100点だったよな?」
「そうだよ」
「算数のテストは?」
「100点だったよ」
「ほらどうだ!俺の息子はすごいんだぞ!」
ご陽気に缶ビールを飲む父親は、同じく缶ビールを飲むおじさんに自慢した。
平凡な小学生なら照れて顔を赤くするか、憎らし気に自信を表情に貼り付けるが健太は眠たそうに目をこするだけだ。
自分の誉め言葉が交差する現場を見ても、健太は何も思わない。
「それにほら見てみろ!図工のコンテストでも銀賞とったしな」
父はスマホの画面をおじさんと祖母に見せた。
写真に撮られた絵は健太が描いたもので、稚拙な技術だが独特な色使いの船の絵だった。
「ケンちゃんは絵も上手なんだねぇ」
「苦手なことないのかケン坊」
「……苦手なこと、運動かな」
「ケン坊運動苦手なのか?」
「うん」
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