学校初日の自己紹介

1/1
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

学校初日の自己紹介

 「きっ……、きつ過ぎるっ……。この学校……、こんな広いのっ……? これっ……、毎日してたらっ……、倒れちゃうよっ……」  私は沢田陽日。今年から華のJKだ。  今、私が歩いているのは森の中。ここがもう校内ということに衝撃を受ける。  私が受験した高校は農業高校。世界一の広さの高校とも噂されている。  校内の広さはなんと! 東京ドーム10個分!   というキャッチコピーがあったが、あんまりピンときていない。    あ、変なことを考えている暇はなかった。  すべての人が経験しているであろう、初日のクラスである自分の自己紹介を考えなければ……。  「なんて言おうか……、ここで失敗したら、後々面倒だよね……。ってあれ? 倒れてる?」  人が倒れていた。私と同じ、長いスカートの制服だ。短く肩辺りまでに切り揃えられている髪が、ボサボサになっている。いや、どういう状況?  「あのー、大丈夫ですか……? 」  「……」  「あのぉ……だいじょ…「はっ!?」  「ひゃっ!?」  「あっ……、すっ、すみませんっ……! 朝早く準備したら……、なんかこうなっちゃいました……。起こして下さりありがとうございます! それでは!」  「……えっ!?、ちょっと待ってよ!」  私の言葉に聞く耳を持たず、彼女は去っていった。まさしく嵐やん……。  ……あっ、なにも自己紹介考えてない……。あの子のインパクト強すぎでしょ……。学校初日の朝から疲れる……。  私もゆっくりしてる暇はない。新品の鞄を肩に担ぎ、全力で坂を駆け上った。    はぁっ……、はぁっ……。  やっとついた……。  日頃、運動をしてなかったバツがついたか……。こりゃあ……、自己紹介どころじゃない……。  肩で息をしながら階段を上り、2階にある農業科の教室に入った。  「えーっとぉ……、私の席は……」  黒板で自分の席を確認しつつ探していると、そこにはボサボサ頭があった。え……、さっきの子? あれー、これはデジャヴかな?  「ねぇ……、ここ、あなたの席じゃないよ。あなたは隣」  「……んん。あっ! すみません! すぐ退きます!」  「気にしないで。そんなことよりさ、名前は?」  「わたしっ? わたしは春風菜々って言います! 春満載ですが、そんなに明るくはないです!」  「充分明るいと思うけど……、まぁよろしくね! 私は沢田陽日って言うの。はるちゃんでいいよ!」  「はるちゃんさん……! よろしくお願いします! はるちゃんさん!」  「いやだから……、はるちゃんでいいって……」  「えへへ……、なんかこういうの楽しいですねぇ……。はるちゃんさん!」  「そっ……、そうだねっ! よろしくね!」  「はい! はるちゃんさん!」  元気だけは申し分ないけど……、なんというか……、面白い子だなぁ。  私は春の風に包まれながら、ほんの少しの幸福感に浸っていたのだった。    ……あ、自己紹介考えてない……。      
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!