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2人の兆し
「逃げてきたって……?」
「はい……。私の家……、お母さんは知らない男の人と家で毎日遊んでて……、お父さんは私を夜のお店に連れて行って、知らないおじさんと無理やり性行為をやらされたりして……。身の危険を感じたので、こっちに逃げてきたんです……」
私は絶句してしまった。喉から声が出ない。かける言葉も思いつかない。
「あっ……、すみません! こんな話しちゃって……」
「いや、私こそごめん……。菜々ちゃん、私を頼ってね。私は味方だよ」
「ありがとうございます……、これからも仲良くしたいですっ!」
「うん! うちらはもう友達でしょっ!」
「はいっ……!」
私は菜々ちゃんの本当の姿を見られた気がして、嬉しかった。そして、菜々ちゃんの日々を奪っていた親を、私は許せない。
私達は、桜の木の根に腰を下ろした。さっきまで降っていた雨もやんでいる。
「ねぇ菜々ちゃん。よかったらさ、一緒に住まない?」
「一緒にですか……? 住みたいですっ……! でも親御さんはどう言うでしょうか……」
「私の両親はとっくに死んで、今は1人暮らしよ。一人だと寂しいもんでっ……」
「あっ……、失礼なこと聞いてしまってごめんなさい……。私も一人は寂しいです……」
「ね……。だからさ、一緒に暮らせたら楽しいかなぁーって思ったの。あっ、もちろん強制じゃないよ! 嫌だったら言ってね!」
「いえいえ! 私もはるちゃんさんが良ければ一緒に住みたいです!」
「ほんと!? え! やったぁ! ありがとう菜々ちゃん!!」
「あの……、そうなると、住む場所はどうしましょう……?」
「そうねぇ……、菜々ちゃんが隠れられる場所がいいし、ここに住もうっ!」
「ここですか!? いいところではありますが……、狭いですよ……?」
「私は大丈夫よ! 今寝てる所も寝袋だしね」
「そうなんですか……、あっ! じゃあ2段ベッド買いましょう!」
「あぁっ……!! それいいっ!! あ……、でも本が……」
「本は大丈夫ですよ! 少し取りにくくなっただけです」
「そか……、ありがとう菜々ちゃん……」
「いえいえ! お互い様ってやつです!」
そんなこんなで、私達は一緒に暮らすことになった。思い描いてた高校生活では無いけど、これが私達の青春なのかな。
お金もない。ろくに住む場所もない私達。
それでも、菜々ちゃんと私なら、楽しく生きていける。
そんな気がした。
その前に……、2人でバイトしなきゃだな……。
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