揺れる者たち

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「湊さんのご都合で決めてもらって大丈夫です。決めてもらって、どこか予約します。この時期予約は必要だと思うので」 ‘もちろん任せるけど恭平くんと約束があったんじゃないのか?’ 「明日1時間ほどカフェに行く約束をさっきしたんです」 ‘じゃあ、明後日わざわざ出るよりも明日そのまま出る?約束が朝ならランチをご馳走になってからドレス、午後ならドレスからの食事…どう?’ 「そしたら…16時半にドレスショップ集合でもいいですか?」 ‘車じゃなくていいのか?’ 「駅前にいるから電車で行けると思います」 ‘分かった。ドレスショップの最寄り駅で待つよ’ 「寒いからお店でいい」 ‘待ち合わせさせて。昨日も待ち合わせ…夕月を待つのはいい気分だったから’ 「そーーぅですか…はい」 急にぐわぁんと脳を刺激する声を出さないで欲しい。湊さんの声を明子さんは腰に、玲子さんは子宮にくると言っていたが私は脳にくると感じる。私のおかしな声に湊さんは真面目に言う。 ‘そうだよ。明日の僕もいい気分に違いない…もう今から気分がいいよ’ 「湊さん、明日はお財布持ってきちゃダメですよ?」 ‘ありがとう、夕月。ご馳走になるよ’ 「じゃあ、今から予約の出来るところなんて限られてるかもしれないけど探します」 ‘夕月の明日も僕と同じで今から始まってるな’ だから…その声はダメですって… ‘もしどこも予約できなくてもいいよ。その時は一緒に立ち食い蕎麦でも食べようよ’ 「それなら3杯奢っちゃいます、ふふっ」 電話を終えてすぐに、自分の思いつくレストランや居酒屋の予約状況を手当たり次第に調べて行く。あっ…ここ…毎年冬に一度か二度行く水餃子のお店。私が食べたいからここでいいよね、湊さん。
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