揺れる者たち

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「恭平くんも頭撫でるの好きだよね」 「俺も?…湊さんか…」 「前から二人とも撫でる…高さがちょうどいいのかと思うほど…二人とも大きいから。でも恭平くんの方が大きいね」 「俺が183で2センチだけだぞ」 「もっと大きく見える」 「肩幅とか骨格か?それより大きい人間になりたいと思うけどな」 「例えば?」 私がそう聞くと恭平くんは珈琲の最後の一口を飲み干してから私を見た。 「ゆうの全てを受け入れて受け止めて包み込める人間…受け入れて受け止めているんだ。ゆうが何言っていても何をしていても肯定的に捉えているのに…期待通りに‘送って’と聞けなかっただけで…あれだ…悪かった」 「…恭平くん…ずっと気にしてたの?」 「いや…そうなのかもしれない…一言‘俺が送る’って言えば良かっただけなのにって後悔はしてる」 「今も?」 「この瞬間で終わり」 「うん…そうしてね。私が子どもっぽかったり、玲子さんのいう‘利かん坊’なのが招いた部分もあるから。利かん坊ってね、玲子さんに初めて言われた時は意味がわからなかったの」 「玲子さんに聞いたのか?」 「ううん。調べたら男の子に使う言葉で、言い換えると分からず屋とか困ったちゃんなんだって…玲子さん、うまいこと言うなぁって感心しちゃった」 「玲子さんは愛情込めて言ってそう」 「私も玲子さん大好きで相思相愛。いい職場です。感謝、感謝…」 そう言いながら時間を確認すると16時を過ぎている。 「ごめんなさい、恭平くん。私もう行かなくちゃ」
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