揺れる者たち

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「今日予定あったのか?」 「なかったんだけど出来たの。ドレスが仕上がったんだって。今から確認に行ってくる」 「湊さんと一緒?」 「うん…ごめんなさい」 やっぱり私には‘そうだよ’と開き直ったようにはいかないから、気がつけば‘ごめんなさい’と言っていた。 「それって…」 そこで言葉を区切った恭平くんに 「うん…やっぱり気分良くないよね…本当にごめんなさい」 椅子から降りて頭を下げる。 「分かっていて15時か16時と俺に言った?」 えっ?何を聞かれてる?すぐにはわからなくて質問の意味を考える。 「いい…いいんだ。駅?行こうか」 考える私の頭をポンポンとしてから恭平くんも椅子から降りる。恭平くんの後ろを歩きながらも、満席の店内のざわめきよりも大きな音で頭を廻る‘分かっていて15時か16時と俺に言った?’の意味を考える。 「ぁ…すみません…」 トレイにいくつかのドリンクを乗せた人とぶつかりそうになり、ギリギリのところで立ち止まり道を譲る。 分かっていてって…分かっていなかったんだけど…分かっていたとしたら?どういう意味?わざと予定を詰め込んだと思っているの?はっきりとはわからないけれど、きっといい意味ではない。また私は恭平くんの気分を害してしまったんだ。
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