揺れる者たち

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店を出るともう駅が見えている。先に店を出ていた恭平くんに 「失礼なことして本当にごめんなさい。ごちそうさまでした」 もう一度謝ってから改札を目指す。もう美味しかったホットチョコレートの味も‘甘かった’としか思い出せない。 「間に合うのか?」 後ろについてきた恭平くんに聞かれて 「大丈夫」 と答えながらパスを手探りで掴んだ。 「気をつけて」 「うん…ありがと」 約束の時間には少し遅れてしまうけど連絡する余裕もないほど、胸が嫌な音で私を責め立てる。 分かっていて15時とは言ってないけど、あとで予定を入れたのは私。良心の呵責を覚えると言いつつ、会ったのは私。スーパーやカフェに行く1時間でいいからと言われて真に受けたのも私。 ‘道理に外れているんじゃないかって…考えるところ’ ‘そこは考えずに子どもになって、誘われたから行くってことでオーケーじゃないか?少なくとも俺は、湊さんとゆうがパーティーに行くこととその準備で会うことは知っていながら誘っているんだから’ それも真に受けた…はぁ…好意を感じる相手に絶対にしてはいけないことをしてしまった。やだ…本当に自分が嫌…好きとか、会いたいとか…それももう周りにいらない。胸の音が頭でもガンガンと音を立て始めて、人酔いしそうな気分の悪さを感じながら人の波に押されて電車を降りた。
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