揺れる者たち

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「夕月」 名前を呼ばれたと思ったら肩を抱かれ顔を覗き込まれた。 「電車で何かされたのか?」 首を横に振ると 「顔色が悪いな…どうした?体調悪い?」 また首を横に振る。湊さんは私の手をぎゅっと握ってちょうど青信号の横断歩道を渡るとコンビニに入った。真っ直ぐホットドリンクの前に立った彼は 「僕は…これ。夕月は?」 繋いでいない方の手でストレートティーを取り私に聞く。湊さんの声と大好きなコンビニに頭や胸の音が鎮まる気がして、私はゆっくりと色とりどりのフィルムに包まれたドリンクを一通り眺めてから‘ホットでもアイスでも’と小さく書かれたゆずレモンを手にした。 「このサイズいいよな」 コンビニの前でコクコクと紅茶を飲んだ湊さんは、その手の280mlペットボトルを見ながら言う。私は頷いてから 「バッグにも入れやすいし…少し遅れてごめんなさい、湊さん」 真っ先に言うべきだったことをやっと口にした。 「出先からなら可能性のある範囲の誤差だから大丈夫だ。酸っぱいの飲んで落ち着いた?きが飲んでる」 「あぁ…漢字を知らない人にはそう聞こえる、ふふっ」
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