揺れる者たち

39/41

8034人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
私の頭はとても自分勝手に…自分に都合よくできているらしい。 ‘何を言われることがある?’ 湊さんにしては珍しく強い口調で言われると、さっきまで私がああしたから、こうしたからと心から申し訳なく思っていたのに… 分かっていて15時とは言ってない、湊さんからの連絡はその後だったもん。15時か16時と言ったけど15時指定したのは恭平くんじゃないか。スーパーやカフェに行く1時間でいいからと言ったのも恭平くんじゃないか。私が道理に外れているんじゃないかって考えたら‘そこは考えずに子どもになって誘われたから行くってことでオーケーじゃないか?少なくとも俺は、湊さんとゆうがパーティーに行くこととその準備で会うことは知っていながら誘っているんだから’とまで言ったじゃないか…恭平くん。 と、頭の中で一度全て恭平くんのせいにして…やっぱり断るのが一番だったのよ…と後悔する…そんなこと、相手の気持ちになればわかるでしょ?と頭の中心から聞こえる自分の声に責められる。分かっていることを言われることほど腹立たしいことはない。私は悔しくて情けなくて…湊さんの手の中で自分の両手を強く握りしめた。 「夕月、言いたくなかったらいいよ…でも夕月が涙が溢れるほどの思いをしていることは…僕は恭平くんに抗議せずにはいられない」 湊さんに言われて、瞳に留まることが出来なかった滴が一筋だけ流れ落ちたことを知るが私が泣く場面でもない。手を汗ばむほどぐっと握りしめた私の頭を軽く自分の肩に引き寄せた湊さんはスマホをタップしたかと思うとすぐに 「恭平くん…夕月に何を言った?夕月は歯を食い縛って何も言わない。出てくるのは涙だけだよ」 私をあやすかのように片手で頭をそっと撫でながらそう言った。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8034人が本棚に入れています
本棚に追加