揺れる者たち

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肯定も否定もすることは出来なかった。湊さんの言葉は嬉しくて肯定したい気持ちと、あまりにも都合が良すぎる言葉を否定したい気持ちが半分くらいずつで、私は湊さんの半歩後ろを黙って歩き続けた。 「夕月、にーっ…は?」 ドレスショップの前で振り向いた湊さんは私の頬っぺを左右にびょーんと引っ張る。 「…ちょ…っ…っ…」 「今から気分はパーティーだよ?今朝見た大使館のホームページ写真を思い出して」 コクコク…頬を摘ままれたまま頷くと 「あらっ…お姿が見えたと思ってお迎えに来たんですけど…仲良くお取り込み中でしたか?」 夢唯さんがショップのドアを開けて、にこやかに言う。 「ふっ、見られてしまいましたか…こんばんは。よろしくお願いします」 湊さんは夢唯さんに挨拶すると私の背中にそっと手を添えて中へと促す。私も夢唯さんに挨拶しながら店内に入ると、ちょうどドレスを着てヘアメイクを終えた方がおられて、その非日常的な華やかさにフワッと気分が上がる気がした。 「完璧ですね…夕月さん、こちら側にスリットが入っていますので立っている時は足を半歩…こう…はい、綺麗です」 ドレスを着てみた私の体をあちこち撫で回しサイズを確認した夢唯さんは、立ち方を伝授してくれて今日は終了だ。 「では25日、夕月さんは16時半にお願いします。湊さんは1時間後にお迎えをお願いします」 「「はい、よろしくお願いします」」
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