変わる者たち

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パールホワイトとパープルの斜めフレンチにマットなホワイトとピンクで和花を描いてもらう。来店前には、単色のもっとシンプルなものを想像していたが…このデザインに吸い寄せられた。担当者さんが、これくらいの色使いの方がドレスと私の年齢をちょうどよく合わせてくれると言ったのに私も納得だ。そして私は大使館という場所に和花デザインがいいと思ったのだ。お正月にもぴったりだと思うしね。大満足の仕上がりを担当者さんは写真に撮り玲子さんに送ると言う。玲子さんに請求するからそういう約束だそうだ。 来た時よりも夜が深くなり、道行く人々や電車内の華やかさにも何だか落ち着きが加わったように感じながら一人で通り慣れた改札を通り抜けて家路を急ぐ。部屋の前で鍵を手にした時には、暗い廊下で10本のネイルを眺めてから鍵を開けた。 キャベツを千切りし耐熱容器に入れふわりとラップをして40秒加熱する。納豆にタレを入れて混ぜ、天かすを加え更に混ぜる。器にごはんを盛りキャベツと納豆を盛りつけ、ソースとマヨネーズと紅しょうがをかけて、ガッツリと混ぜて大きな口を開けて食べる。クリスマスイブも平日ならいつもの一皿だ。去年は…はぁ…ゴミがまだあったな。 去年太一にもらったネックレスをゴミ箱へ放り投げ膝を抱える。太一は斉藤さんとまだ見ぬ赤ちゃんを囲んでいる頃だろう。私は斉藤さんに負けたのか…それとも赤ちゃんに負けたのか…何がいけなかったのだろう…あんな話を聞いて未練があるはずもなく太一への気持ちは冷めて凍りついている。全く会いたいとも思わない。だけれども…どうして? お風呂に入ろ…そう思っても体が動かない。pururururu…誰でもいいから…私を動かして…膝を抱えたまま手探りで手にしたスマホをタップする…誰でもいいから…話して… ‘夕月?…もしもし?夕月?’
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