変わる者たち

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夕月の部屋に一番近いコンビニでエクレアとシュークリーム、そしてホットドリンクを適当に買う。僕が部屋へ行くよりは外の方がいいだろう。部屋の下から再び夕月に電話を掛け 「降りて来られるならゆっくりおいで。今、思いついたから準備が悪くてごめん…ブランケットを持って来られたら持って来て。無くても大丈夫だよ」 そう言ってからエンジンをかけたまま車を降りた。すぐにぐしゃっと畳んだブランケットをコートの腕で持ちづらそうに抱えた夕月が現れた。 「もしも必要だったらね…今はいらないから後ろ。ん、夕月」 ブランケットを受け取って後部座席に置いてから助手席のドアを開ける。 「こんばんは…どこ行くの?」 夕月はすぐには乗らないで僕を見上げた。電話の‘終わってたから’と言った時と違い少し思考が動けば、ちょっと警戒心も働いているのだろう。 「レディの部屋に失礼するのはよくないかと思ってね。飛行機を見に行かないか?」 「飛行機?」 「そう。僕はたまに行くんだよ。シートを倒して車の中から見たり外に出て見たり、空港のデッキから見たり…何となくデザインに行き詰まった時に行くことが多いな。鉄の塊が空を飛ぶってことを考えたり、微妙な形の違いを見つけたり、夜ならただ頭上を通り過ぎる光をボーッと眺めてる」 「…」 「今年の夕月のクリスマスイブの記憶を作りに行こうか?」 僕がそう言うと小さく‘ありがとう’と言いながら夕月がやっと車に乗り込んだ。僕が車で迎えに来たからといって当たり前のようにはまだ乗れないんだよな…それでもいい、大丈夫だ。少しずつ僕が夕月の心を解していくよ。
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