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「え…夕月…見せて…」
シートベルトを引く彼女を見ながら自分もシートベルトを引いていたのだが、夕月の指先に目が釘付けになった。ルームライトをつけて夕月の手を軽く持ってよく見える角度を探す。
「色合いは華やかで柄は落ち着きもあっていいね。夕月の雰囲気に似合ってる…うん、いい」
僕がそう言ってそっと彼女の手を戻すと、今度は彼女が両手をルームライトにかざして言った。
「玲子さんのクリスマスプレゼントなんです。今日の予約してくれていたから出来たてほやほや…ふふっ、気に入ってます」
「うん、僕も気に入った」
「もっとシンプルなものを思い描いて行ったんですけど…」
「この時期特有の華やかさがあっていいと思う」
「うん」
夕月は自分でルームライトを消して前を向いたまま言った。
「玲子さんのネイルで気分よく帰ってきて…クリスマスイブでゴミの存在を思い出して捨てたけど動けなくて…湊さんの電話でまた動けてる…ありがとうございます」
夕月の言葉には頷くだけでコンビニの袋を渡すと車を走らせる。
「いろいろある…私のどれだろう…」
「好きなものを好きなだけ、どうぞ」
「贅沢なデザート…」
コンビニで贅沢なデザートか…デザートは毎日食べないからそう思うよな。
「エクレアのチョコがドリンクに乱されている…」
「早く救出を頼んだ、夕月」
「らじゃ…私は運転を頼んだ…運転中の隣で失礼します…いただきます」
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