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「…今日はいい日です」
エクレアをごちそうさま、と食べ終えた夕月が空の袋を片付けながら言う。
「そう…いいことあった?」
いいことだけを思い出してくれればいい。
「うん。湊さんに言わなくちゃって思っていたことがあってね…ふふっ…」
彼女の声に温度が完全に戻ったことに安心して
「僕に?何だろう…」
僕のことを思い出してくれていたことに嬉しくなる。だが、森だか林だかを思い出す瞬間があることも確かなのだから今日は攻めない…ただ側にいる。
「今日ね、玲子さんにクリスマスプレゼントを渡しましたぁ」
「ああ、うまくいったんだな?」
「ふふっ…あははっ…あのね…まずは玲子さん、奇声を発してから朝のメイクを落としてその場でメイクしたの…ふふっ」
「事務所で顔洗って、事務所でメイクしたのか?」
「うん、デスクで…もう9時過ぎてたけど…ふふっ…念入りに赤いマスカラを塗ってたよ」
「夕月も嬉しいよな」
「うん…でもね…ふふっ…」
私、綺麗?などのやり取りを聞かせてもらううちに到着だ。
「デッキは22時まででもうすぐ閉まるからこの公園がベスト」
「ああぁ…もう…ちょうど降りてきた」
「降りてくる方はああいう見え方で、発つ方が頭上を越えるポジション」
「ちょこちょこ人がいるんですね」
「写真撮る人もいるみたいだ」
デートの人もいる場所だが、敢えて言わなかった。夕月が意識することなく今のリラックスしたまま今日、クリスマスイブの残りを過ごして欲しいから。
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