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しばらく車内からいくつかの飛行機を見送ったあと、凍てつく寒さの外でコートの上からブランケットを被り、自分の真上を轟音とともに飛び去る飛行機のお腹を見る。
すぐ隣にいる湊さんと互いの声も聞こえないような轟音が辺りの空気を揺らすのが心地いい。
「ストレス発散になるのかも…この音」
「体全体で聞く爆音な」
「そういうコンサートで長時間続けて聞くのは、私は苦手だけどこれは好きかもしれない」
「明るい時間はまた違う景色だよ」
「機体そのものがよく見えるでしょうから…あっ、あっちは帰ってきた…帰って来るっていう感じもいいですね」
自分が飛行機を利用する時は交通手段だから、じっくりこういう風に離着陸を見たことはなかったな。今夜は冷え込んでいるのに湊さんのブランケットはない。一緒にっていうのもおかしいから車に戻ろう。車に戻ると
「夕月」
エンジンをかけて車内を暖めながら湊さんが私を見る。
「はい」
「パーティーは今の気分でなければ、またの機会に誘うよ。無理に明日行く必要はないぞ」
「気を使わせてすみません。でも大丈夫…行ってみたいと思います。湊さんのおかげで今日はいい日になったし大丈夫…このネイルもドレスに合うでしょ?和花は大使館にいいかなって私のチョイスです。行く気満々だったのに…さっきはちょっとしたアクシデント…」
「人生にアクシデントは付き物だ。いつでも付き合うよ」
彼はそう微笑むと、さらに続けた。
「そのネイル、明日にぴったりだと思う。喜んでエスコートさせてもらうよ」
「慣れない場なので…湊さん、よろしくお願いします」
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