8037人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
パーティーの日は有給を取っていた。半分仕事だからと、玲子さんは半休扱いでいいと言ったけれどそういうわけにはいかない。
午前中、玲子さんにネイルのお礼のメッセージを入れるとしばらくして電話がかかってきた。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
‘いい仕上がりだわ。楽しんできなさい’
「はい」
‘恭平くんと昨日話をしたけど、夕月、大変だったんだね。大丈夫?’
「…大変?」
‘大変でしょ?告白はまだしないとかまだ言わないって言われると、夕月はフルことも出来ないんだもの’
「…ああ…大変なのかな…大変と感じるところまで元が落ち着いていないんですよね…」
昨日もゴミに動けなくなるくらいだもの…元が大変なまま次々に起こることに対応しきれていない。
「大変なまま大変だから…」
‘そりゃそうだ…あははっ、うまいこと言うわね’
「でも最初の大変さを、あとの大変さで紛らわせてもらっていることも事実です」
昨日あんな時間に湊さんの車に乗ってもいいのかと悩んだけど、結局ネイルを見る時以外、彼は私に触れることもなく甘い言葉を囁くこともなく、ただ一緒に轟音の中に身を置いていた。ただ数時間一緒にいるだけ…それに救われた。
‘夕月はいろいろ真面目にも頑固にも頭を働かせるけれど、流れに身を任せていい時もあるよ。それで楽になれることもあるから。流されるのも逃げるのも人生のうち…仕事ではあり得ないけれど、プライベートでは大ありよ’
玲子さんはそう言うと最後に
‘湊さんとのドレスアップツーショットを送ってよ’
と電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!