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初めて一人でドレスショップのドアを開けると、夢唯さんはお客様のヘアセット中だった。私はまずドレスに着替えてからドレッサーの前に座る。
「夕月さん、髪は全部上げてしまいますよ。ケープが美しく見えるように残す髪の束も作らず全てアップで」
「はい、お願いします」
「彼女がそういうヘアは上手だから任せて、メイクは私がさせて頂きます」
スタッフさんに髪をセットしてもらい、夢唯さんがメイクをする際
「ネイル、素敵ですね。ネイルに合わせたカラー使いでいきましょう」
と私がいつもしないようなメイクを施していく。顔だけを見ると‘派手’だけれども、立ち上がるとドレスの色の広がりとのバランスが絶妙だ。
「こんばんは」
「こんばんは、湊さん。ちょうど夕月さんのお支度が整いました」
「夕月」
一歩私の方へ来た湊さんを見て私は固まった。
「わっ…どうしよう…湊さん…仕上がり過ぎ…」
「本当ですね。夕月さんも引けをとらない美しさですから、きっとパーティーでのベストパートナーです。しっかり湊さんの腕を取って背中を伸ばしていて下さいね」
夢唯さんがそう言う間、湊さんは私を見つめ目尻を下げた。
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