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まずはピアノルーム。
「湊さんは内装にはノータッチですか?」
「基本的にノータッチ。でも最初に図面と同時に内装のイメージ図を上げているものでコンペに通っているから似ているよ。ソファーの数なんかは全然違うけれど」
「このソファーとカーテンと全く同じ素材って…オーダーメイドですか?」
「ごめん、知らないけどこの部屋の家具と調度品は全て自国製とは聞いている」
一般的に出回っていない家具等を屈んで見てから
「ねぇ、湊さん」
夕月が床に膝をついたまま僕を小声で呼ぶ。ドレスより作業着で連れて来てやりたい…そう思いながら夕月の前に同じように屈んだ。
「うん?」
「このチェスト、写真に撮ってもいいのかな?」
「外に拡散しなければいいだろ。今日こうやって開放している部分だから」
「拡散はしないけど、星本さんに見せたいの。私がコーディネートする部屋に似たようなものを作ってもらえるか参考資料」
「ん、大丈夫だ」
僕がそう言うと夕月はチェスト全体の写真から扉を開けた写真など詳細まで10枚ほどの写真を撮る。
「ありがとう、湊さん。大収穫」
「そりゃ良かったが、僕のオススメは次の第二応接室」
「わっくわくです」
そう笑う夕月に肘を出すと、やはり自然に手を掛けた…いいね、夕月。ヒールの彼女に合わせゆっくりと歩くが、夕月の方が現場の勢いで歩いて行きそうだ。
「今日、夕月と来て良かった。ドレスで現場にいるような勢いの夕月も最高だな」
僕の言葉に急に歩くペースを落とした彼女に
「ドレス捲って走る?それとも裸足になる?夕月のやりたいようにしていいぞ」
と声を掛けると
「…滅相もございません…わたくしお淑やかなれでぃですので上手にエスコートされるのがお得意です…たぶん…」
珍しく夕月の早口が聞けた…可愛い。
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